▲8万3千の署名を議会へ提出した

 「静清合併の結論延期を求める会」の請願署名活動にたくさんの皆様のご協力をいただきありがとうございました。

 しかし、大変残念なことに請願は否決され、合併が可決されました。合併が決まった今、清水市の歴史で最も多くの市民が署名をした、今回の署名活動を振り返り、皆さまと一緒に今後の課題について考えてみたいと思います。 (合併通信16号掲載)


議会は8万3458人の声を無視した
合併の結論延期を求める活動を振り返って


        静清合併の結論延期を求める会・事務局 磯谷千代美

●とまどい、不満、疑問

 人口30万人以上の市で課税される事業所税(清水市は年間約15億円と試算)は、課税される市内の企業にとって、この不況下では死活問題です。

 昨年から今年にかけて、課税される企業の不満は、商工会議所を突き動かしていました。特例(合併年度と続く3年間の減免、その後の法改正で5年間に延長)を静岡側が全く認めようとしていなかったことも反発を招いていました。

 一方、合併協議会が開催した各地区説明会では、どの地区でも市民から多くの疑問や不満の声が上がっていました。「合併の是非も含めて判断する」という合併協の建前と、実際に市民に渡されたパンフレットの「合併すればこんなに良くなる」というたくさんの箱物やプロジェクト。人口や財政の予測など、よく考えれば不安な材料も多いのですが、その場で渡されてわかるものではありません。

 しかも、「新市の名称、事業所税の特例問題、地方審議会の設置」などが決まっていません。すり合わせ項目の多くが、「合併時までに」あるいは「合併後に調整する」「統一の方向で検討する」「「再編する」というものでした。

 いくつかの地区では、連合自治会長から「地区の振興プランが載っていない」「地域の課題が示されていない」という発言がありました。

 一月には住民投票の会の署名が三万余り集まりつつも、臨時議会で否決されていました。市民や企業の中から様々な声があがる中で、もう少し時間を掛けて合併問題を議論しようと、清水商工会議所は、「結論延期を求める署名」を行うため、一月に各種団体(自治会、体協、建築業協会、消防、文化協会など)を集めましたが、一月二十五日に常議員会で突然やらないことを決めました。

●延期を求める会を結成

 その日のうちに私は、浜田地区連合自治会長の長谷川氏と興津の山本氏に電話で連絡を取り合い、一月二十七日にわずか八人で会議を持ちました。今思えば、これが今回の署名活動の出発だったのです。どこが支援してくれるか何のあてもありませんでした。ただ、中身も、市民への説明も意向把握も不十分なまま進められる合併に、市民として黙っていられなかったのです。

 多くの市民も同じ気分だ、きっと支持してくれると思いました。「商工会議所の代わりに、結論を延期し市民の意向把握を求める署名をやろう。紹介議員も不明で、陳情か請願かも決められないが、とにかく動きだそう」という出発でした。

 時間が迫っていました。2月議会で請願や陳情の受付け締切日は、2月13日です。その前に、マスコミに案内し、広く市民に伝える必要もありました。

 会合を繰り返し、名前を「静清合併の結論延期を求める会」とし、請願署名に取り組むことにしました。並行して会への誘いや呼びかけ人として名前を出してくださる方々の確認もしました。  2月2日の第26回合併協議会は新市名称の決め方すらも決定できない迷走でした。翌日、記者会見の後、街頭へ。署名活動がスタートしました。

●予想を超えた広がり・市民のパワーを実感

  漁協のみなさんが河岸の市で署名活動をしたり、会としても興津の寒桜まつりや駅前銀座で行いました。こうして活動を進める中で、請願の紹介議員となってくださる議員が出てきました。

 2月13日、森市議会議長へ請願の提出と記者会見。紹介議員は自民党会派の稲葉裕二氏、長阪純男氏、市政クラブの栗田知明氏、橋本勝六氏の4名でした。マスコミもまさか自民党会派の中から紹介議員が出るなどと思っていなかったらしく、大きく報道しました。しかし、自民党会派のお二人は、その直後に会派を除名になってしまいました(後日、自民新清会を結成)。市民の側に立つ勇気ある行動でした。

 議員の方たちは精力的に署名活動を行い、私たちは激励されました。こうして署名は私たちの予想をはるかに超えて、市民の中に広がっていきました。特に、合併協が2月28日新市名称を静岡市と決定すると、反応がいっそう大きくなりました。

 駅前銀座で署名をしてくれた方に署名用紙を渡すと、数日後には郵送で戻ってきたり、地区説明会や市民意見発表会でも「合併通信」と一緒に配布すると「もっと集めたいので署名用紙をください。」「娘は18歳だが合併が嫌だと言ってます。署名してよろしいですか」と電話が掛かるなど、問い合わせも数多くありました。

 署名用紙は私たちの手を離れて、次から次へと広がっていきました。私たちの知らない所で多くの方が動いてくださり、市民の合併への不安、そしてパワーを実感しました。用紙の増刷など事務局活動も大変忙しくなりました。インターネットでも署名を集めることにしました。

●委員会に溢れる傍聴者・11万余の声を否決

 委員会前日には総計7万8143名の署名を提出(最終的には本会議までに8万3458名、他にインターネット署名47名、FAX90名)。「静清合併・住民投票清水市の会」も同じ趣旨の請願を3万余りの署名を添えて提出し、両方で11万5千余の署名となりました。

 14日の市議会広域行政特別委員会の会場は傍聴者で溢れ、交替で傍聴を行う場面もありました。延期する会は代表の長谷川氏と事務局の私が趣旨説明を行い、住民投票の会は西谷氏が行いました。

 2時間近く、委員の方たちから私たちに質問が行われた後、審議され、採決は否決となりました。 反対した片平議員や風間議員などは、十分に市民に周知し意向を把握しているという根拠に、説明会の開催数や参加人数、配布した広報チラシの枚数などを挙げました。

 しかし、4年間の説明会の回数や広報チラシの枚数の総計が問題なのでしょうか。建設計画ができる前に行った説明会が、合併の是非に関わるような判断材料となるのでしょうか。地区説明会の時ですら、新市名称も事業所税の特例も、市民生活がどうなるかも示されず、市民の意向把握の場とはなっていませんでした。

 また、「住民発議という市民のイニシアチブで設置した合併協は尊重すべきだ」と片平議員が言いました。しかし、清水JCが2月下旬に住民発議の署名ボランティアにアンケートを取ったところ1167人を対象としたのに、2割以下のたった221人しか回答が無かったという驚くような事実もあります。

 住民発議4万2千名の2倍以上の署名が、集まっている、この事実こそ市民の声であり、何よりの意向把握と言えます。  しかし、清水市の有権者数19万に対し、11万5千余の署名が集まっているという現実を、多くの議員は無視し、十九日の本会議でも否決されました。

●本会議に陳情提出

 合併協議会は3月20日、正式に合併を決議。「延期を求める会」は市議会に、「政令市問題は合併協でも協議していない。人口や財政、区割りなどの具体的なフレームを出し、70万政令市でも飛躍的な発展が見込めるか検討すべき。議員特例は否決し、選挙で信任を得た議員が清水の未来を見守って欲しい」旨の陳情を提出しましたが、4月15日、総務環境委員会で否決されました。そして市議会は18日、静清合併に関連する五議案を可決しました。

●なぜ大多数の市民の声が否決されたのか

 「延期を求める会」では、10万の署名を集めよう、有権者19万の半数以上を集めれば、議員も市民の方を向いてくれると皆思っていました。ところが署名を集めている途中で、議員のこんな声が聞こえてきました。「5万でも10万でも怖くないよ」。

 すでに議員特例で2年間任期が延長されることが、合併協議会で早々に決まっていました。本来は、来年4月末が市議選ですが、4月1日に合併し、任期の延長で選挙はその2年先の17年3月となるのです。

●選挙がなくなり怖いもの無し

 清水市議会には、引退予定の議員が10人近くいると言われています。彼らは市民の声は怖くないということです。合併すれば、選挙無しに任期が2年延びて、県庁所在地の新市の議員となれる、歳費は当然上がるだろう、年金も増える、2期目の議員なら、年金を受け取る権利もできる、議員にとっては良い事ばかりです。

 合併特例法で議員の任期・定数特例が認められているのは、合併してより大きな市になると議員定数が減るため、議席が無くなるのを怖れる議員が反対派となるのを押さえるためにあるのです。

●これからの課題

  合併の一元化本部が静岡市役所に設置されました。これから2130項目のすりあわせが行われます。その内782項目が合併前に決められるとのことです。市民生活に直結する項目も多いのです。両市にある18ヶ所の同じ町名も調整されます。

 各種団体にとっては、補助金なども静岡市とどうすり合わせるか大きな問題です。市内の企業にとっても行政に関わる仕事がこれからどうなるか大変な問題です。名前が静岡市となったように、実質的な吸収合併にならないかと不安もあります。「飛躍的な発展」どころか、清水市から撤退する企業の話も聞かれます。

 合併が決まったこれからが正念場です。すり合わせも行政任せでなく、議会がそして市民が見守っていかなければなりません。関係する団体が声を上げていくしかありません。

●市民のパワーを実感

 私は、今も自問自答しています。11万5千余の市民の声を無視した議会、合併の是非を市民に問う事無く決めた議会は、市民に信を問わなくて良いのだろうか。 「10万の署名も怖くない」と、市民の方を向こうともしない議員に清水の未来を託せるのでしょうか。

 私たちは、この署名活動を通じてたくさんの方とつながりあい、市民のパワーを実感しました。このパワーこそ、まちを変える力だと思います。一生懸命署名をあつめてくださったあなたはどう思いますか。

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