マグロ丼と冨士

今の季節、冨士が一年で一番美しく感じる。
江尻船溜まりの岸壁に冷たい風が吹いていた。まるで鱗のような波が、小刻みに揺れている。港の外では波頭が風に飛ばされているのだろう。
船が港に入ることを表す言葉に、寄港と帰港がある。寄り道と、帰り道だ。いつも帰る港は母港となる。英語なら、a (ship's) home port。洋の東西を問わず「home」は母のイメージなのだろう。
母港は船舶の本拠地だが、軍事用語として使われることが多いような気がする。そういえば、航空母艦も「母」だ。
いや、捕鯨船のような船団での漁法が消えかかり、太平洋艦隊のみが目立っているだけかもしれない。

河岸の市のなかに小学生の習字が展示してあった。習字塾で習っている子どもたちの作品のようだ。
学校の習字とは別ジャンルの「まぐろ丼」という文字が連なっている様は壮観である。何枚もの半紙の「まぐろ丼」を書いたのだと思う。
白いご飯と赤身のマグロを思い出しながら書いたのだろうか。それとも、南の海を思い描いたのだろうか。
そうだ。今夜は、まぐろ丼にしよう。
