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2007年02月01日 浜田

記憶の定着

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島崎の話を続けよう。

父が撮影したネガケースに「清見寫眞材料店」のスタンプが押されたものがある。カメラも清見さんで買ったという。

ピントから露出、シャッタースピードまで自分でセットした時代だった。だから、固定焦点でオート撮影の小型カメラが出たときは嬉しかったと、大正生まれの父は昔のことを昨日の出来事のように語る。

その当時、月給の何ヶ月分もしたカメラで撮影された白黒写真が、何冊ものアルバムに貼られている。

一年ほど前から、少しづつネガをスキャナで読み取っている。我が家の歴史を記す貴重な映像をデジタル化したいと思ったからだ。アルバムを頻繁に見ていたとは思えないのだが、ネガから取り出された写真は、どこかで見覚えがあるものばかりだ。幼い頃の記憶は深い場所に定着している。


スキャナのシューという読取り音を聞くと、眠っていた記憶が画面のなかに蘇る。こんな気分もたまにはいいものだ。気分が高揚したついでに自転車で江尻まで走った。時間にすれば15分ほど、走ったという程の距離ではない。


江尻の港に河岸の市の灯が輝いていた。

この港で、出航する鰹船、鮪船を何度も見送った。紙テープが指のなかで激しく回り、ふっと手から離れる。手の感触が無くなると同時に、五色の紙が竜のようにうねった。

ここに足が向いてしまうのは、そんな記憶を、いつまでも残しておきたいと思っているからかもしれない。

ポケットから出した小さなカメラを三脚につけ、露出は3秒にした。自分の目で見た輝きを残したい時、オートマチックは非力である。

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