帰路

16:00に土肥港を出航した「冨士」は、この季節にしては穏やかな駿河湾を清水へ向かった。土肥港の岸壁を離れ数分で右舷に富士山が見える。
冬場の駿河湾は西風が強い。朝は穏やかでも午後から風が強まり欠航になることがよくある。
夕方の便が欠航となり、修善寺までバスを乗り、そこから電車を乗り継いで清水へ帰ったことが何度かある。土肥から清水まで65分の船旅に慣れてしまうと、バスと電車の乗り継ぎはひどく疲れる。「歳だね」と笑われそうだ。

興津埠頭のガントリークレーンの灯りが見え始めると、清水に戻ってきたことを実感する。東名高速で清水に向かって走る時、由比の海岸線から三保を見る時と同じ感覚だ。
日の出埠頭から、そのまま家に帰ることが多いのだが。港橋の近くに用事があり、いつもと違う道を歩いた。巴川に揺れる街の灯に吸い寄せられ、港橋を歩く足が停まる。
「これが見えたら」「ここから先は」
意味が違うとお叱りを受けそうだが、結界という文字が浮かんだ。
