海の虹

土曜日の朝、家の用で駿河湾フェリーに乗って西伊豆に向かった。冬型の気圧配置で風が強まるという予報が出ていたが、予定通りに出航した。
岸壁では風が強いと感じたが、船はいつもと同じように静かに出航した。三保の赤灯台を過ぎ、由比の沖合を走る頃から、風とうねりが強くなり、波しぶきがデッキを越えるようになった。飛沫が霧のように船を覆い、小さな虹が出た。
虹に見とれていたら、「デッキや通路にいる方は客室にお入り下さい」という船内放送が流れ、客室に戻る。
時々、船底をたたきつけるドスンという鈍い音がする。揺れてはいるのだが、波にもまれるというような感覚ではない。横揺れ防止装置のお陰かもしれない。
予定通り、土肥に入港したが、接岸までの時間はいつもより長かった。強い風のため作業が慎重になっているのが素人目にも判る。
下船が完了し、今度は清水に向かう車が船に入る。いつもと同じ光景だが、清水への便が出航した直後、作業員が「欠航」と書かれた看板を出した。これより後の便は欠航である。
冬の駿河湾は強い西風が吹く。
子どもの頃、盆と正月の伊豆行きは、ほとんどカツオ船だった。
清水港に入港したカツオ船に便乗させてもらうのだ。荷物を積まない船は、強風のなかで大きく揺れた。窓の外の景色が海だけになったと思ったら、空だけになる。まるでシーソーのようだった。
接岸した後も、地面が揺れる感覚が続いたことを覚えている。それに比べたら、今のフェリーは快適だ。