ISONOTE

西伊豆一泊二日

●2010年7月27日

きょうびの磯

清水と土肥を結んでいる駿河湾フェリー。以前は西伊豆の本家に行くときはマイカーだったが、この頃はフェリーで行き、土肥からバスを使っている。時間的には変わらず、運転しないので疲れない。

 父が私の顔を見つめても、息子であることが判らなくなった。突然の変化に驚いたが、いずれ来るだろうという予感はあったので、取り乱すことはなかった。それ以来、同じ質問はしていない。同じ答えが、返って来ることが怖いからだ。

 あれこれ考えても仕方がない。気分転換に、父を連れて西伊豆に一泊旅行に行くことにした。船の振動や、海風を感じたら、もしかしたら以前の父が戻ってくるかもしれない。わずかな期待もあった。

 父と母が生まれ育った村は避け、すぐ近くの観光ホテルを予約した。テラスに露天風呂がある部屋が取れた。残念ながら、部屋からは海が見えないが、大浴場は無理だったので、部屋風呂を優先した。家での入浴介助も慣れてきたので、宿での入浴は苦労しなかった。広々とした露天風呂は快適だった。

きょうびの磯

宿のテラスからの眺め。ビールを呑みながら月をぼんやりと眺めていた。

 食事も済ませ、入浴も終えて、布団に寝かせたら、すぐに寝息を立てた。旅の疲れというより、どこに連れられていくのか判らない緊張で疲れ切っていたのかもしれない。

 廊下の自販機でビールを買い、テラスに腰掛けて外の景色を眺めていた。たぶん最初で最後になる、父親との温泉旅行。父のためというより、自分の自己満足かもしれないが、それでいいのではないかと勝手に納得した。夜風が心地よく、ビールが美味しかった。こんな穏やかな夜は久しぶりだった。

きょうびの磯

土肥に向かっているときは表情が硬かったが、帰りの船では穏やかな顔になっていた。

 この旅行の三年前。家族四人で西伊豆に一泊二日の旅行に来たことがある。子ども達が大学生や社会人となり、両親との旅行より友達との旅行を楽しむ年頃になってきた。それと、父の介護がこれから本格化する予感があったので、ひとり家に残しての旅行は、今しか出来ないと思った。家族全員が、それを感じていた。美味しい料理を食べ、温泉に何度も入り、卓球もやった。楽しい家族旅行だった。

 グループホームで暮らしはじめた父に、「フェリーに乗って、また行こうか」と聞いてみたら。「ええや」という返事が返ってきた。行きたくないのか、遠慮なのか本当の気持ちは判らない。「行きたくなったら、また行こうよ」と答えるのが精一杯だった。あの夜のように、ぼんやりと月を見ながらビールを飲んでみたい。宿は西伊豆。やはり、私の自己満足だろうな。


●2011年07月20日 7月20日の朝
●2011年07月15日 9時から5時
●2010年10月10日 ゴヘイとゴスタン


●2012年01月12日 このサイトについて